豪傑シリーズ
作家について
1924年兵庫県尼崎市生。1952年、村上三郎、金山明とともに「ゼロ会」を結成。1955年、伝説的と言える前衛芸術グループ「具体美術協会」の会員となる。数トンの泥と格闘する《泥に挑む》(1955年)や、円錐状に立てた木の丸太を斧で切りつける《赤い丸太》(1955年)など、美術史家の富井令子が「パフォーマンス・ペインティング」と呼ぶ革新的な作品を次々と発表する。他に類を見ない「フット・ペインティング」のスタイルが始まったのはその1年前、1954年だった。
1951年にジャクソン・ポロックの「アクション・ペインティング」を知った白髪は、ロバート・ラウシェンバーク、サイ・トゥオンブリー、イブ・クラインなどポロックと同時代の西洋アーティストと同様、抽象表現主義の枠組みを超えた表現を追い求めた。白髪は天井から吊り下がったロープにつかまりながら、大きなキャンバスや紙の上で、滑り、回転し、渦を描くようにして油彩と足で描くというスタイルを確立し、真に革新的な絵画作品を生み出すことに成功する。
白髪の作品は1958年9月ニューヨーク、マーサ・ジャクソン・ギャラリーでの「具体」展を通し、初めてアメリカのオーディエンスに紹介された。しかし、当初白髪の作品は既存の芸術運動から派生したものに過ぎないとして評価されず、その重要性は見逃されてしまった。それでも長きに渡るキャリアの中で独自のスタイルを貫き通した白髪は、鑑賞者に挑みかけるようなエネルギーと視覚的な力を持った作品を生み出し続けた。

60年にわたるキャリアの中で、日本とヨーロッパにおける白髪の地位は揺るぎないものとなっていった。しかしアメリカでは長年にわたり評価をうけず、その重要性が認知されたのは近年になってからである。
白髪の作品はこれまで、「Destroy the Picture: Painting the Void, 1949–1962」(2012~2013年、ロサンゼル現代美術館)、「TOYO 1955-1970:新しい前衛」(ニューヨーク近代美術館、2012~2013年)、「Gutai: Splendid Playground」(グッゲンハイム美術館、ニューヨーク、2013年)、「Gutai, l’espace et le temps」(スーラージュ美術館、ロデーズ・フランス、2018年)など、数々の展覧会で発表されている。
回顧展及び個展は、レ・ザバトワール近現代美術館(フランス・トゥールーズ、1993年)、兵庫県立美術館(2001年)、横須賀美術館(2009年)、ダラス美術館(2015年)、尼崎市総合文化センター(2018年)、東京オペラシティ アートギャラリー(2020年)などで開催されている。