展覧会について
ファーガス・マカフリー東京はリタ・アッカーマン、アンドロ・ウェクアによる二人展を開催します。長年にわたる同志、時にはコラボレーター、そしてそれぞれが確立した強いパーソナリティーを持つ作家が集い、2人の間で20年以上にわたって続けられるインスピレーションとクリエティビティーの対話を明らかにします。
2人はソヴィエト理想主義の崩壊、体制下における抑圧、祖国からの亡命、移民としての経験を共有しています。リタ・アッカーマンとアンドロ・ウェクアはともに1990年代に東側諸国を去り、異国での創作活動を始めます。アッカーマンの作品にはハンガリーでの時間を連想させる要素はあまり見られず1980年代から今に至るまでのアメリカでの体験が色濃く見られます。それに対してウェクアの作品からは、現実か想像かがはっきりしない謎めいた過去への憧憬が感じられます。
ゲオルク・バゼリッツやジグマー・ポルケと並び、民話やおとぎ話からの引用、ハイ・ローカルチャーの混在、統率のとれたリアリズムと触覚的で魅惑的なアメリカのジェシュチュラルな抽象表現の間を突き進む道を切り開いた「東部」アーティスト勢に、アッカーマンとウェクアは数えられます。また同じくヨーロッパから亡命し、具象表現、風景画、純粋な抽象表現の中に物質的、精神的な効果を生み出したウィレム・デ・クーニング、マーク・ロスコとの関連性は言うまでもありません。
2002年、共通の友人であったジャンニ・ジェッツァーの紹介を通して、とても似たマインドを持つ2人は出会い、それはすぐにコラージュやドローイングをFAXで送り合うやりとり、ジン「Chpater1」の自費出版、その後「Chapter2」「Chapter3」のNieves(スイス)からの出版へと発展していきます。写真、音楽、詩、日常会話に触発される二人は、電話、留守番電話、携帯のメッセージ、Eメール、画像の交換など様々な方法を通して離れた相手へのコミニケーションを行います。それはまるで物理的な距離がより、二人が似通ったイメージや出来事に心を惹かれるということを強調しているかのようです。本展で展示される作品は2008年から今年に制作された絵画とコラージュ作品ですが、アッカーマンとウェクアは初めて出会うそのずっと前から共通した理解、解釈を持っていたのです。作家たちの間で21世紀に交わされたやりとりが東京で形となるのを、本人たちが直接見ることは叶いませんが、本展をご覧いただくみなさまには二人の作品群が強く共鳴することを体感いただけるでしょう。
本展に合わせ、アッカーマンとウェクアの共作アートブック「Chapter4」が出版となります。(日英バイリンガル、Fergus McCaffrey / Case Publishing共同出版)また青山のSKWAT/twelvebooksにて両作家の貴重な絶版書籍を含めたカタログ展示を予定しています(詳細後日発表)。