生誕100周年記念展
元永定正:
さんかくまるしかく
ファーガス・マカフリー は、元永定正⽣誕100周年を記念し、1990年から99年にかけて制作された作品14点を展⽰する「さんかくまるしかく」展を開催します。期間は2023年2⽉18⽇までとなります。
漫画家としての訓練を積み、1940 年代後半に地元の雑誌や新聞などのイラストを描き⽣計を⽴てていた元永は、1955年、具体美術協会へ初期会員として参加します。吉原治良、⽩髪⼀雄、村上三郎ら他の具体第⼀世代のアーティストたちとともに、第⼆次世界⼤戦後、実験的な芸術、⾃由、個性の精神を打ち⽴てます。過去の保守的姿勢や軍国主義からの脱却を⽬指し、吉原はメンバーに「今までにないものをつくれ」と主張しました。その⾔葉の通り独創性を重視した元永は絵画、彫刻、⽔のインスタレーション、煙のパフォーマンスなどインタラクティブな遊び⼼を強調し、喜びを誘発する多彩な作品で、吉原の信念に応えることとなります。
1960 年代後半、プロセスを重視する抽象表現が具体美術の覇権的ともいえる特徴として認識されるようになると、元永はそこからの脱却を⽬指すようになります。1966年から67年にかけてニューヨークのレジデンス・プログラムに参加したことによって、具体との距離感と考えるスペースを得た彼は、具体以前、具体初期時代の豊穣な制作態度に⽴ち戻ります。初期の作品に⾒られた擬⼈化された形を復活させ、エアブラシの技法を採⽤し、次第にストリート・カルチャーやアニメの美学をハイアートの領域へと融合し始めます。1970年代後半になると、元永の⼤きな⾝振りの筆跡、スクラッチがほどこされたピクトグラム、エアブラシのドリップが重なり、それはベルリンのラインハルト・ポッズ、ケルンのアルベルト・ウーレン、ニューヨークのジャン=ミシェル・バスキアやキース・へリングらと共に出現した「バッド・ペインティング」の時代的な流れに適合します。

しかし、元永の作品に政治的要素が加わることはなく、⼦供の絵本、インタラクティブな公共の彫刻、パプリック・パフォーマンス、美術教育を通じて、美術専⾨外の観客に芸術を届けようとする、彼の作品はそれまでの例にない開放的なアートという特別なジャンルに属するものでした。そこでは⾔語による読解ができないリズミカルなフォルム、渦巻く線、浮かぶ形による、⾔葉を介さないダイレクトなコミュニケーションを楽しむことができるのです。
元永定正は2011年10⽉3⽇、宝塚市没。兵庫県⽴美術館(1998年)、広島市現代美術館(2003年)、⻑野県⽴信濃美術館(2005年)、三重県⽴美術館(2009年)ほか回顧展多数。直近では三重県⽴美術館(2022年)、宝塚市⽴⽂化芸術センター(2022年)、兵庫県⽴美術館(2022年)、史跡旧崇広堂(伊賀市・2022年)で展覧会が開催された。海外で初となる回顧展は2014年ダラス美術館にて、同じく具体美術協会のメンバーであった⽩髪⼀雄の展覧会と同時に開催された。
エディトリアル
元永定正 「一寸先は光」の歩み
元永定正は、日常会話の中でしばしばジョークを言って人々を笑わせた。「一寸先は光」(註1)もその口癖のひとつ。それは、楽天的な自由人だった彼の生き方を示すジョークというよりも彼の生き様であり、常に前向きに制作した作品表現にも通じている。元永は、平面作品だけではなく、立体作品、絵本を制作した。また、本来かたちの定まらない水や煙を作品として表したことは、…
“It’s Light Up Ahead”:
A History of Motonaga Sadamasa
A History of Motonaga Sadamasa
Motonaga Sadamasa had a habit of making people laugh by interspersing everyday conversations with jokes. He also had a habit of saying, “It’s light up ahead.” More than just the personal philosophy of an artist known for his optimistic, free-spirited nature, this line also applied to…
GALLERY
カタログ
Sadamasa Motonaga
2015年 ファーガス・マカフリー出版
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